霧島工房 アイマス同人界の隅っこで蠢くピコ手改めフェム手サークル
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律子オンリー、3年ぶりの単独開催!

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彼女が制服に着替えたら

 仕事がある。
 アイドルとして、いや、このご時世、アイドルじゃなくても仕事があるということは素晴らしいことだ。しかも、こちらから取りに行った仕事ではなく、先方から来たオファー、あまつさえ相手は大企業。こんなありがたい話はない。

 普通なら、そのはずだ。でも、俺の心は、そう簡単には納得してくれなかった。



「……社長、冗談がきついですよ」
「この顔が、冗談を言ってる顔に見えるかね?」
 社長室でまじまじと見つめあう男二人。うっかり小鳥さんあたりに見られるとまたよからぬ妄想などをかきたてられてしまいそうな気もするが、残念ながら今はそんなことに気を回しているような余裕はない。
「本当の話、なんですか?」
「君も疑り深いね。さっきからそう言ってるじゃないか」
 呆れたように、社長の頬が緩む。でも、普通の神経の持ち主なら疑って当然だと思う。
「しかし……」
「君が疑うのも無理はないとは思うが、これは、本当の話だよ」
 改めて社長の視線の先、机に置かれた企画書に目を落とす。そこには確かに、「株式会社 ローソン」という文字が躍っていた。
「率直に申し上げて、悪い冗談としか思えません」
「君も言うねえ」
 どこか俺の反応を楽しむような社長の声色を笑って受け流せる余裕は、しかし今の俺にはなかった。
「社長だって、律子に対する『ローソン』という呼ばれ方が決して好意的なものでないことぐらい、ご存知ですよね?」
 律子に「ローソン」というありがたくない称号が付いたのは、たった一つの雑誌記事がきっかけだった。
 ――素顔のア・ナ・タ――
 アイドルの「普段着姿」を「スクープ」するというありがちな取材を、さして深く考えることもなく、律子が普段よく着ている、本当の普段着で受けてしまったのがそもそもの間違いだった、ということになるのだろうか。
 今思えば、何も馬鹿正直に本当に「普段着」で取材を受ける必要もなかったのにとも思うが、その時はそんなことになるとは思ってもおらず、普段律子が好んで着ている青の縦ストライプのシャツで取材を受けた。
 本人も俺もそんなつもりは全くなかったし、記事のどこにもそんなことは書かれていなかった。でも、誰が言い出したかは知らないが、その服をして「ローソン」という「愛称」が付くまでに、さほどの時間はかからなかった。
「災い転じて福となす、という言葉もあるだろう」
「既存のファンに、そこまであざといことをして、と思われたら致命的なマイナスになります!」
 少なくとも俺は、「ローソン」という呼ばれ方が必ずしも好意に基づいたものではないと思っている。それに「迎合」するなんて、そんなやり方、そう簡単に首肯できるものではない。
「だが、それによって上がる知名度と秤にかけたら、どっちの方がプラスなのかは明白ではないかね?」
 退路が絶たれつつあるのを感じる。社長の言うことは、理屈としては理解できる。プロデューサーとしても理解できる。じゃあ、どうして俺は、ここまで頑なに首を縦に振ろうとしないのだろうか。
「今の律子君のレベルから考えると、願ってもないクラスの仕事だということくらい、君にもわかるだろう」
「それは……し、しかしっ!」
 なおも言い募ろうとする俺の顔を、社長がじっと見つめる。その眼光に、喉まで出掛かっていた言葉を飲み込むほかなかった。
「君の心中が複雑であろうことは理解しているつもりだ。だが、これがチャンスだということを理解できないほど、君も馬鹿ではないだろう?」
 馬鹿じゃない……そうだろうか? 頭で理解できても、心がそれを拒絶している自分は、本当に馬鹿じゃないのだろうか。
「よろしく頼んだよ」
「律子と……相談します」
 これで終わりと言わんばかりの社長に即答しなかったのは、せめてもの俺の抵抗だった。




「で、緊急ミーティングって、何事ですか?」
 事が事だけに、一刻も早く律子と相談をしたい。連絡を取ると幸いにして特に予定もなかったらしく、学校が終わってすぐに事務所に来てくれた。
「ああ。実は、一つ仕事の話が入ってきてな。それで、律子と早急に相談したくって」
「なんだ……そんなことだったんですか」
 少し緊張していたらしい律子の体から、目に見えて力が抜ける。
「そんなこと?」
 知らず口調がきつくなっていたのか、珍しく律子があわてたように首を振った。
「あ、別に、仕事のことを軽く考えてるわけじゃないですよ? ただ、電話口のプロデューサーの声が随分と深刻そうだったから、私はてっきり悪い知らせかとばかり思ってたんで」
「……俺、そんなに深刻そうな声だった?」
 自分としては普段と変わらないテンションのつもりだったのだが。尋ねた俺に、律子が苦笑いを浮かべて小さくうなずく。
「ええ、それはもう。どういう内容なのか、聞くのをはばかられるくらいに」
「そりゃ……すまなかったな」
「でも、仕事の話なら別にそんなに深刻にならなくてもいいんじゃないんですか?」
 すっかり気が緩んだ律子に対して、俺の気持ちは重くなるばかり。
「いや、内容が、ちょっとな」
「なんです? 水着で運動会に出ろとか、そんなのですか?」
 律子の視線が少し険しくなる。俺としてはそういう律子の姿を見てみたいという気がないわけではないが……っと、今はそんなことを考えている場合じゃなかった。
「ははは。それならここまで悩まないさ。実は……」
 一旦言葉を切り、改めて律子の目を見る。次の言葉を告げたとき、彼女の瞳に宿る感情は、何だろう。
「ローソンから名誉店長就任の依頼が来た」
「……は?」
「ローソンから、名誉店長就任の依頼が来た」
 もう一度、一語一句同じ言葉を繰り返す。二人の間に流れる沈黙が、少し痛い。
「……プロデューサー、冗談がきついですよ?」
「……律子も、そう思うか。やっぱり」
 先刻、全く同じようなことを社長に向かって言ったことを思い出して、思わず苦い笑みが漏れる。
「そりゃ、確かに一部でローソンローソン言われてるのは私だって知ってますから。でも、だからといってそこでローソンの名誉店長なんて言われても、冗談にしか聞こえないのは当然じゃないですか」
「俺も、そう思う」
 当たり前だ、俺だって冗談だと思ったさ――そう、目で訴える。
「……本当なんですか?」
 いまだ信じられないという顔をしている律子に、社長から渡された企画書を差し出す。無言のままそれを受取った律子がページをめくる音だけが、会議室に響く。
「……ふぅ」
 一通り目を通し終わった律子が顔を上げて、小さく息をついた。その顔には、少なくとも嫌悪感といった風に分類される感情は浮かんでいないように見える。
「本当だったんですね……」
「さすがに冗談で緊急ミーティングなんて言ったら、律子に殺されかねないからな」
「……それ、どういう意味ですか?」
 キッとこちらをにらんだ律子に、冗談だよと笑って答える。やれやれといった表情を一瞬浮かべた律子だけど、すぐに顔を引き締めて口を開いた。
「でも、これはすごいですね。相手は一流企業だし、知名度もある。大きなチャンスじゃないですか?」
 予想していたよりずっと前向きな反応に、むしろこっちが軽く戸惑う。
「律子は……嫌じゃないのか?」
「え? ああ、確かにローソンっていうのは蔑称かもしれませんけど、単純に仕事として考えたら、こんなにおいしい仕事、そうそうないと思うんですけど」
 あっけらかんと言い放つ律子に、何故か胸中に焦燥感が募る。
「……あざといとか、そういう風に思われないか、とか考えないのか?」
「やり方次第だと思います。そうならないように話を詰めていくのが、プロデューサーの役目なんじゃないですか?」
 まっすぐ過ぎる律子の指摘に、ぐうの音も出なかった。仕事内容として願ってもない規模のものであることがわかっているにもかかわらずそれを無にしようとするのは、確かにプロデューサーとして失格かもしれない。
「耳が痛いな。確かに律子の言う通りだ。――とりあえず、先方に詳しい話を聞きに行くか」
「ええ。この仕事、なんとか物にして見せましょう」
 胸のわだかまりが完全に消えた訳ではない。ただ、律子の姿を見る限り、この仕事は受けるべきだ――そう考えられる程度には、俺の気持ちの整理はついていた。



「なんか、すごかったな」
「……ええ、正直、少し引きました」
 打ち合わせの席へ赴いた俺たちを待っていたのは、予想を上回る熱烈な歓迎だった。聞けば、今回の発案者が律子の熱烈なファンだったらしく、ファンクラブにも入っているのだとか。ありがたいことではあるけれど……
「まさか、ミーティングの席にはっぴ着用とは、ね」
「でも、先方の熱意は間違いなく伝わってきました」
「ああ、それはもう、痛いほどに」
 この担当一人の空回りじゃないか? そんな不安すらよぎるくらいのハイテンションに、俺たちは終始圧倒されっぱなしだった。もちろん、担当一人の空回りでもなければ暴走でもなく、ちゃんと会社としての企画だったことは間違いないのだけれど。
「で、どうするんですか? 受けるんですか? この仕事」
「え? そのつもりで来たんじゃないのか?」
 思いもよらない問いかけに、思わず律子の顔を見る。そんな俺に、律子は少し意地の悪い笑みを浮かべた。
「そりゃ、私がそのつもりでも、プロデューサーがどうしても嫌だって言うなら、私の独断で受けるわけにもいかないんじゃないですか?」
「……律子は時々意地悪だな」
 ふふふ、と笑った律子が二三歩前に進んで、くるっとこちらへと向き直る。
「でも、この仕事、もしプロデューサーが持ってきた仕事だったら、私、断ったかもしれません」
「え? って、そもそも俺が持ってきた仕事じゃないって、どうしてわかったんだ?」
「それくらい、誰だってわかりますよ。あれだけわかりやすく嫌そうな顔をしてたら」
 再び律子に追い付いて、並んで歩き始める。
「……それもそうか」
「私だって、最初この仕事の話を聞いた時は『え?』って思いましたもん。もちろん、悪い意味で。そんなの、当り前じゃないですか」
「そうだったのか? その割には結構最初から乗り気だったように見えるんだけど」
 そんなこと、一言も……俺の偽らざる本音に、律子が小さく頬を膨らませる。
「もう。それでも私のプロデューサーなんですか? 担当アイドルの本心も見抜けないなんて」
「う……面目ない……」
 厳しい指摘に、返す言葉もない。少ししょげた俺に、しかし律子はそれ以上厳しい言葉を続けることはなかった。
「でも、プロデューサーもこの仕事に違和感を感じてくれていたのがわかったから。誰でもなく、プロデューサーはこの仕事に違和感を感じてくれたから。だからこそ私は吹っ切ることができたんです」
「……よくわからない理屈だな」
 口ではわからないとは言ったけど、何となくはわかる。何となくはわかるし、律子が今回の仕事について少なくとも今は納得していることははっきりとわかるから、それでいいじゃないかと、今はそう思う。
 律子にもそんな俺の微妙な気持ちが伝わったのか、クスッと小さく笑みをこぼした。
「そうですか? まぁ、わからないならわからないでもいいです。ただ、これだけは言っておかないと」
 立ち止った律子につられて、俺も足を止める。
「プロデューサー、ありがとうございました」
「……俺、お礼を言われるようなこと、したか?」
「んー。どうでしょうね。でも、私はプロデューサーにお礼を言っておきたかったんです」
「……そうか」
 本当にお礼を言わなければいけないのは、俺の方かもしれない。
「律子」
「何です?」
「……いや、この仕事、是が非でも成功させよう」
 でも、お礼を言うよりもこの言葉の方が今はふさわしい。
 そう、思った。


唐突に、久々にSSなんぞを上げてみましてこんばんわ。霧島です。
一応このお話は以前、同人誌として出したお話ではあるんですが、果たして何人の方がご存知名のやら、といった所です。
なんせ、名古屋でのオンリーで出した本だったんで。
ご存知の通り(?)、普段は同人誌として出したお話をネットに転載する、あるいはその逆っていうのはあまりしない主義ではあるんですが、このお話に関しては今後おそらく二度と日の目を見ることがなさそうなので、主義をまげてちょいとこちらで掲載してみたりした次第であります。
ちなみに、何故日の目を見そうにないかというと、

・一緒に収録したお話が完全に黒歴史なので再版できない(設定齟齬的な意味で
・直近で出そうとしている総集編には多分収録しない(センリツネタじゃない的な意味で

から、なんですが。
でも、自分としてはそこそこ気に入ってるお話なんで、このまま眠らせるのもあれだなぁと思ってちょいと公開してみました。

そう。総集編なんですよ。
冬に向けて出そうかな、と思ってるんですが、果たして需要があるのかどうか、という所で少し尻込みをしていたり。
いや、好きで出すことなんでその辺をあまり言い過ぎるのはいやらしいかもしれませんが、とはいうものの文庫サイズで200P程度の本となるとやっぱりそれなりにアレもかかるわけで、多少はその辺のことも意識しないとぶっちゃけ自分が餓死しちゃうんですよね。
他にももっと重大な問題もあったりもしますが、まぁ、その辺で総集編をどうしたものかなぁ、と少し悩んでいる昨今、であります。
冬コミにはその総集編と新作、そして可能ならまたゑっちなこぴ本の三本で望みたいなぁ……とか考えているものの、その先の来年のスケジュールのことを考えると果たしてどこまで実現性があるのやら。
そもそも、冬コミ当選するのかどうかすらわからないという大問題も、あるわけですががががが。

そんなこんなで、霧島は今日も元気です。

あー。12/23のライブチケット、当たるかなぁ……
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【2009/10/18 00:09】 | SS(もどき含む) | トラックバック(0) | コメント(0)
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管理人:霧島義隆

霧島義隆

元765プロ所属、今は律子と一緒に独立してとあるデレマス事務所「律子ぺろぺろの会」代表。気付いたら個人でもS3、事務所もs3。他、アケマス・アイマス2・アイモバ・ミリマスでもアイドルマスターの称号を取ったので自称5冠。ただしミリマスは引退済み。
なんちゃってSS書き。色々こじらせてめんどくさいと言われがち。

口癖は #律子ぺろぺろ
危ないので石は投げないでください。

個人ID:57798220
事務所ID:6698

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