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特別な、いつもの日 |
ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ……
耳障りな音が、夢と現をさまよう私の意識の中に割り込んでくる。黒とも白ともつかない闇の中をたゆたう私の意識が、徐々に覚醒の水面へと浮かび上がってくる。 (んん……うる……っさい……っ) 布団から伸ばした手が、音の元をつかむ。神経を逆なでする音がやみ、再び部屋に静寂が戻る。窓の外からかすかに聞こえるざわめきをBGMに、再び沈みかけた意識が、ようやく重い腰を上げた。 (……おはようございます……と) 起床時間を示す時計の針が、眼鏡をかけない視界に入る。寝起きが悪いわけではない。が、いまだ完全に覚醒しきっていない身体を叩き起こすべく、シャワールームへと足を運ぶ。 (きょうの……予定は……) 身体に当たる水流が、眠気を削り落としていく。エンジンを温めるように、頭の活動を一段、また一段とあげていく。どこか霞がかかっていた思考が、段々と明晰になって来るのを感じる。シャワーの栓を締める頃には、頭も身体もしっかりスイッチが入っていた。 体のスイッチが入ったら、次は燃料だ。コーヒーをすすり、パンをかじりながらケータイをチェックする。スパムメール・メールマガジンに混じって、珍しい人からのメールが届いていた。 (お母さんから……? なんだろ) 首をひねりながら、メールを開封する。何か悪い知らせだろうか……一抹の不安を抱いた私の眼前に現れた文面は、しかし私が全く予想していないものだった。 お誕生日おめでとう 今日は律子の誕生日だね。元気にやってるかい?しばらく顔を見てないけれど、たまには家にも顔を見せなさいね。それじゃ。 (あー……そういえば……) 多忙な日常に急き立てられてすっかり忘れていた。母の気遣いがうれしくもあり、少しこそばゆくもある。 今日は六月二十三日。私の二十二回目の誕生日だった。 * 「今日は東洋テレビで千早の収録が一本、桜花の予定はありません」 事務所に出社し、いつも通り社長に今日の予定を報告する。元プロデューサーだったこの人を社長と仰いで一年以上、最初はどことなく違和感のあったこの関係も、いつの間にか当たり前のものになっていた。 「ふむ。ということは、さほど時間はかからないかな」 「ええ。特に何かトラブルでもなければ大丈夫だと思いますが……何か予定でも?」 首を傾げた私に、社長が笑って答える。 「今日は律子の誕生日だからな。ささやかなパーティーでもと思って」 「え? いいですよ、別にそんなの」 まだ「誕生日が怖い」というほどではないけれど、改めて祝われるのはなんだか照れくさい。少し腰が引けた私を見て、社長が鷹揚に首を振る。 「いやいや。こういうことはきちんとお祝いしておかないと。たまには肩の力を抜くことも大切だぞ」 「そんなこと言って、社長か抜きたいだけ、じゃないんですか?」 「んー。まぁ、否定はしない」 それまでの偉そうなお言葉はどこに消えたのか、いたずらっ子のような表情で少し照れくさそうに笑う。 「まったく……とりあえず、できるだけ早く帰るようにはします」 「ああ、待ってるから」 やれやれ……と心の中でため息を一つ。もっとも、うれしくないかといわれると――正直少し、うれしかった。 「っていうことで、今日は早く帰って来いってさ」 移動中の車内で、千早に「社長指示」を伝える。助手席に座る千早の顔がほころんだのがわかった。 「ふふ。社長らしいわね」 「でも、私ですら半ば忘れてたことをよく覚えてるものね」 「そういうものじゃないかしら? 私だって今日が律子の誕生日だってことくらい、ちゃんと覚えていたわよ」 確かに、千早の誕生日はちゃんと覚えている。社長の誕生日も……なるほど、そういうものか、と一人得心する。 「それは……その、ありがと」 「プレゼントも用意してあるのだけれど……せっかく社長がそういう場を用意しているなら、そのときに渡した方がいいわね」 「楽しみにしてるわ」 これは、なんとしても仕事を早く終わらせないといけないみたいね……そっとアクセルを踏む足に、力を込めた。 「おはようございます、ディレクター」 「お、おはよう、律子ちゃん、千早ちゃん。今日もよろしく!」 「おはようございます。こちらこそ、よろしくおねがいします」 局に入り、今日お世話になるディレクターに二人そろって頭を下げる。この歳になってちゃん付けは……と思うものの、私がアイドルだった頃からの付き合いで、この業界も向こうの方が遙かに長いので仕方がない。実際、一度ちゃん付けに文句を言ったら「俺から見たら二人ともひよっ子よ」と豪快に笑い飛ばされてしまった。実害もないし、言い返すこともできないので今はあきらめている。 「そうそう。律子ちゃん、誕生日おめでとう」 「あ、ありがとうございます。って、よく覚えてましたね」 社長や千早だけならともかく、まさかこんなところでも声をかけられるなんて……さすがに驚きを禁じえない。 「そりゃ、天下の如月千早のプロデューサー殿の誕生日くらいはちゃんと押さえておかないと……なんて、冗談冗談。俺だって昔は二人のファンだったんだから、それくらい覚えてるよ」 「へぇ……そうだったんですか」 「あ、あれ? もしかして疑ってる? その目」 調子のいいことを言うディレクターを軽くにらんでみたら、目に見えてあわてたようなそぶりを見せた。そんな様子がおかしくて、思わず吹き出してしまう。 「あははは。そんなことないですって。ありがとうございます」 「さすが律子。引退してもなおモテモテね」 「ちょっと、からかわないでよ千早……」 「さ。それじゃ今日もバシっといくかね。千早ちゃん、律子ちゃん、ヨロシク」 「はいっ」「はい」 その一言で、ディレクター一同、現場の空気が切り替わる。私も、少し浮ついていた気持ちを改めて締めなおした。 * 「って、パーティーの予約って、ここですか?」 幸いにして収録もスムーズに終わり、事務所に戻った私たち(それでも「遅い遅い」と謂われなき文句を言われたが)が連れて行かれた場所――だるい家の看板を見上げて、思わず目が丸くなる。 「ほら、たまにはこういう場所も、な」 「悪いとは言いませんけど……」 別にコース料理とか、そういった物を期待していたわけではないけれど、さすがにこれは予想外だった。若干、複雑な心境ではある。そんな私の隣で、千早が小さく笑った気配がした。 「でも、懐かしいですね、とても」 千早が微笑んで目を細める。確かにその佇まいはあの頃、私たちがまだアイドルとプロデューサーという関係だったあの頃と何も変わっていない。もっとも、その時の事務所はもっと大きな場所に移って、今はここにはないけれど。 「さ、ここで突っ立っていても始まらない、入るぞ」 社長を先頭に、店に足を踏み入れる。記憶に残るそのままの佇まいで、店内は喧騒に包まれている。懐かしい声に案内され、店の奥に通された。 「律子は生でいいよな。千早はウーロン茶?」 「いえ、せっかくですから、私も生を」 「え? 千早が?」 「たまには、ね。一杯だけ」 「そういうことなら。じゃあ、とりあえず生中三つと、あと……」 かしこまりました、と厨房に下がっていく店員の背中を、なんとなく眺める。 「考えてみたら、ここに夜来たのって初めてです」 「あれ? 二人ともそうだっけ?」 私の言葉にうなずいた千早を見て、社長が意外そうな顔をした。 「ええ。お昼にランチを頂いたことは何度かありましたけど」 「そうか。俺は前の事務所のときに社長や小鳥さんとよく来てたんだけどなぁ」 「それは知ってます。二日酔いで死にそうな顔してた時もありましたね」 「あー……それは言わない約束ってことで。あ、ほらほら、ビールもきたし、乾杯するぞ乾杯」 なんだか上手くごまかされたような気もするけど、ここでこれ以上こねる話でもないだろう。並んだジョッキに手を伸ばす。 「それじゃ、とりあえず」 社長がジョッキを持ち上げて軽く傾ける。あわせて、私たちもジョッキをかかげた。 「乾杯!」「乾杯!」「乾杯!」 キンッ、と涼しい音とともに、三つのジョッキが合わさる。早速口をつけている社長の飲みっぷりは、端から見ていても爽快なくらいだった。 「ふぅ……改めて、誕生日おめでとう、律子」 「ありがとうございます。改めて言われるとなんだか少しくすぐったいですね」 「あ、そうだ。これ、プレゼント。改めておめでとう」 「お、ありがと。開けていい?」 千早がうなずいたのを確認して、包装紙を開ける。手元を覗き込んでいた社長が中身を見て小さくつぶやいた。 「お、腕時計か」 「ちょっと前に壊れたみたいな話をしてたでしょ。だから」 「うん。これはうれしい。ほんと、ありがとう」 「どういたしまして。いつもお世話になってるから、ね」 どちらかというと私のほうがお世話になってる気も……なんて、多分それはお互い様、っていうやつだろう。いまさらそんなことを言うのも野暮ってやつだ、多分。 「それで、社長からはプレゼントはないんですか?」 「え? えっと……このパーティーがプレゼント……ってことで、一つ」 「本当は社長が飲みたかっただけ、何じゃないんですか?」 珍しく、千早が食いついてきた。思わぬ方向からの口撃に、社長も苦笑いで答える他ないらしい。 「今日の千早はなかなか手厳しいな。もしかしてもう酔ってる?」 「さぁ? どうでしょう? あ、すいません。ウーロン茶一つ、お願いします」 「あはははは。じゃあ来年は三倍にしてプレゼントしてもらいましょう。あ、私は生中追加で」 「まったく、容赦ないな、うちの稼ぎ頭たちは。っと、俺も生中で」 注文を聞いた店員の背中を眺めながら、不意に社長が小さく息をついた。 「こうやって、ずっと誕生日を祝えればいいな」 「それって、律子へのプロポーズ、ですか?」 千早の爆弾発言に、社長と二人、思わず飲み物を吹き出しそうになった。 「なっ!」 「なんでそうなるんだよ。第一、律子と結婚なんかした日にゃ、毎日尻に敷かれそうで……」 「……随分と失礼な言い様ですね」 にらみつけると、あわてて冗談だよ冗談、と社長が首を振る。この人は昔から、どこか一言多いところがある。 「でも、プロデューサーと律子なら付き合いも長いし、お似合いだと思うんですけど」 「それを言うなら、千早だって長いじゃないの」 「うふふ。それもそうね」 半年くらい私のほうが付き合いは長いけど、もう何年も三人でやってきてるのだからその程度の差は誤差だろう。改めて思えば、随分と長い付き合いになったものだ。 「いやあ。もてる男はつらいなぁ」 なんていう感慨も、社長の能天気な感想で吹き飛ぶ。 「大丈夫です。もててないですから」 「まったく、身も蓋もないな」 そう苦笑いを浮かべながらも、どこか楽しそうにも見える。こうやって三人、肩の力を抜いて話をするのは久しぶりかもしれない。 「ま、冗談はさておき、これからも一緒に頑張っていきたいものだね」 「ですね」 「じゃあ次は、来年の千早の誕生日だな」 何が「じゃあ」なんだかよくわからないけど、でもなるほど確かに次は千早の誕生日だ、なんていう思考は、もしかしたらそろそろアルコールが回ってきたのかもしれない。 「楽しみにしています」 「奇跡の歌姫、如月千早の誕生日なんだから、ここは一つ、ぱーっと誕生日公演でもぶち上げたいところね」 「うむ。そうなると明日からでも会場を探さないとな」 「ふふっ。最高のプレゼントかもしれません」 気づいたら仕事の話になっていた。でも―― そんな「日常」もまた、とても心地よかった。
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今年も、またこの時が来た |
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novel_idolシリーズ第五弾、萩原雪歩ノベルアンソロジー刊行。 16人が育てる、華麗なる花々に乞うご期待! まんだらけ様にて絶賛委託中! ![]() </PR> はいはーい、霧島ですよー? こんばんわ。 最近、PCのご機嫌が微妙に斜めでちょっとこまりんぐな日々です。 さておき。 今年もまた、6月23日が近づいてまいりました。 そう、我らがアイドル、秋月律子の誕生日にございます。 そして、秋月律子の誕生日といえば、2006年より連綿と続く、あの(?)誕生日合同誌であります。 そう、一番最初の誕生日本は、サンクリで出てたんですよねー。 なんていう話は今はさておき。 昨年も、オフセではなくコピーでしかも何故か自分が発起人の一人みたいな感じではあったものの何とか発刊されたわけですが、なんとしたことか今年も自分が発起人みたいな感じの一人となって、PennyLaneの川泉ポメさんとともに、発刊する運びとなりました! いや、今年は6月に自分が出られるイベントがなかった(まぁ、サンクリはありましたが)ので、正直自分が先頭に立つのもなぁ……なんて思っていたら、ポメさんが「いや、やりましょう! フリーダム出ますから!」という力強いお言葉を頂いたので、よし、これはやっぱやるしかないか、と一念発起した次第、であります。 といっても、自分は原稿で参加するわけではないので、あまり何かをやっているという印象はなかったりするのですが(笑) ちなみに、今回もコピー誌なので、まだ原稿がほとんど集まってません! 参加者が増えたりすることもあるかもしれないので、参加者の発表はまた改めて、とさせていただきとうございますが、今回もまた、律子スキーの、律子スキーによる、律子スキーのため(だけではない……かもしれない)の、すばらしい誕生日本が出来上がるものと信じております。 というわけで、6/25 フリーダムは、 あー01 PennyLane での、律子誕生日本にご期待ください! あ、もちろんポメさんの新刊もね! 自分も楽しみです、一ファンとして。^^ ちなみに、誕生日本のタイトルは、RitsukoでGagでBirthday、略して RGB です。 |
◎貴サークルは、 |
日曜日 東地区“レ”ブロック-11a に配置されました。
霧島です。 <PR> novel_idolシリーズ第五弾、萩原雪歩ノベルアンソロジー刊行。 16人が育てる、華麗なる花々に乞うご期待! とらのあな様にて絶賛委託中! ![]() </PR> ↑こちら、そろそろ委託期間が終了します。 よろしければポチっとしていただけると色々とうれしゅうございます。 と、いうわけで、もっカラこと「もっと! colorful Master」お疲れ様でしたという話をする暇もなく(いや、暇はありましたが)、夏コミの当落が判明しました。 冒頭の通り、3年ぶりに夏コミに帰ってまいりました。 最近、夏はずっと落ちる流れが来ていたので今回も正直だめなんじゃないかと思ってましたが、意外にも(?)夏コミ当選、しかも長年の宿願かなっての律子島配置ということなので、諸々がんばっていこうと思います。 正直なところ、最近色々あってアイマス同人へのモチベーションが下がり気味な上に、このまま夏落ちていたらひょっとしたらフェードアウトしていたんじゃないか、という気すらしていたので、今回の当選は、同人の神様が「なぁお前、もう少しやってみてもええんとちゃうんか?」と言ってるのかな、などと非現実的なことを思ったり思わなかったり。 律子の誕生日である6月にイベントサークル参加予定がないって言うのが、もう。 そこで割かしとどめを刺されかかっていただけに、首の皮一枚つながった感があります。 まぁ、自分がフェードアウトしたからなんだよ、という突っ込みも入りそうですが。 さてと。どんな本を出しましょうかね…… あ、あとサークル参加がないと言った6月ですが、一応25日のイベントで自分がちょっと何ぞかかわる本が出る予定だったりします。 なんというか……去年もそんなことあったよね、と言えば、お分かりいただける方はお分かりいただけるのではないかな、と。 詳細は、また後日にでも。 |
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管理人:霧島義隆 |
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元765プロ所属、今は律子と一緒に独立してとあるデレマス事務所「律子ぺろぺろの会」代表。気付いたら個人でもS3、事務所もs3。他、アケマス・アイマス2・アイモバ・ミリマスでもアイドルマスターの称号を取ったので自称5冠。ただしミリマスは引退済み。
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